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猫になりたい

最近カザリがかわいくてしょうがないのと猫になりたいを聞いたら書きたくなりました。映アンじゃないのでこっちに。カザリと真木の短文です。ホモってほどではないかな、と思いつつ、やっぱり若干ホモなのでご注意下さい。カザ真木?逆?分からん…
 えらく不自然な姿勢で階段に座っているので自分まで人形になってしまったのかと思ったら、真木の膝の上には猫がいるらしかった。どこから入ってきたのかは分からない。飼い猫らしくぶよぶよした体のサバトラで、警戒心というものがまるでなかった。何しろ勝手に他人の家に入って、勝手に他人の膝で眠るような猫だ。カザリは首をかしげながら近付いていって、隣に座った。
「お前、どこから来たの」
 猫はヒゲと尻尾をぴくんと動かしただけでカザリを完全に無視した。彼らの眠りが浅いことはよく知っている。要するに狸寝入りだ。真木の膝の上がよほど気持ちいいのだろう。
「ふうん、人間じゃなくてもいいんだ」
 背中を丸めて猫に覆いかぶさり、真木の腿に肘をつく。腕があたっている部分から鼓動が伝わってくる。小さくて柔らかくて、全身で「守ってください」と言っているみたいな動物だった。
「どいてください、カザリくん」
 真木は不愉快そうにため息をついて人形を腕にセットし直した。声色はいつもと変わらないようだが、多少困っていることには間違いがない。
「あったかくて気持ちいいでしょ、猫」
 グリードとてあたたかさは感じる。人間にとってあたたかいのが気持ちいいことも知っている。真木はわずかに肩をすくめ、カザリと猫を乗せた自分の膝を見下ろした。
「猫は嫌いです」
「へえ。僕のことも?」
「猫は、気まぐれですから」
 カザリは声を立てて笑い、猫の隣にだらしなく寝そべった。さすがに膝から落ちそうになるが、バランスを保つのはそう難しいことじゃない。真木は「カザリくん」と呼んでそれを咎めた。
「重いんです。それに、やることがありますし」
「もう夜だよ」
「グリードでしょう、私も、君も」
 確かにグリードに昼夜の区別があるわけではない。それに元々猫は夜行性の生き物だ。けれど、というかだからこそ、夜はさみしい。人間のようにさみしい時間を眠って済ます方がきっと楽だ。この狸寝入りしている猫も、きっとそんな感じの理由で真木の膝の上にいるのだろう。いいなあお前は、とカザリはつぶやく。
 できることなら、そうやって生きたい。もうあんな大きな獲物は狙わない。食べられる分だけの狩りをして、毛づくろいをして、さみしい夜はあたたかな膝の上に丸まっていたい。とはいえ真木のいうように、そんなのは多分単なる気まぐれなのだ。カザリはときどき全部がどうでもよくなる。気持ちのいい浅い眠りだけが欲しくなる。さみしい夜から匿ってくれる膝が欲しくなる。
「そいつじゃなくて僕を撫でてよ」
 真木の手がぎこちなくサバトラの狭い額をなぜるのを間近で見ていたら、そんな言葉が出てきた。
「ここに居座るつもりでしょう」
「そうだよ」
「駄目です。早くどいてください」
 カザリは眠ったふりを続ける猫ごと、真木の膝にしがみついた。
「何をしてるんです、カザリくん」
「かばってよ、僕のこと」
「かばう?」
 真木なりに困惑した声で聞かれた。カザリは気まぐれに笑って体を丸める。鼻先をかすめるやわらかな毛の感触すら自分には感じ取れないのに、何で夜をさみしいと思うのだろう。あーあ、猫になりたいなあ。カザリは眠りにつく猫のしぐさを真似しながら、ゆっくりと目を閉じた。まだあたたかな膝の上で。
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